退職代行を頼んだ日の話

私は今日、会社を辞めた。 自分の口からではなく、代行サービスを通して。

3年間、毎朝7時に起きて、終電で帰る生活。 「頑張ってるね」と言われるたびに、 なぜか胸が苦しくなっていた。

辞めたいと思ったのは、半年前。 でも、上司の顔を思い浮かべるたびに、 「迷惑をかけてしまう」と思って言い出せなかった。

「今忙しい時期だから」 「君がいないと困る」 「もう少し頑張ってみない?」

まだ何も言っていないのに、 そんな言葉が聞こえてくる気がした。

友達に相談したら、こう言われた。 「普通に辞めるって言えばいいじゃん」 「そんなの、当たり前の権利でしょ」

でも、私には「当たり前」ができなかった。 優しい人でいたくて、 迷惑をかけたくなくて、 断ることが怖くて。

ある日、ネットで知った。 自分の代わりに退職の意思を伝えてくれる人がいることを。

最初は「そんなのありなの?」と思った。 でも、調べてみると、 私と同じような人がたくさんいることがわかった。

「直接言えない」 「引き止められるのが怖い」 「もう会社に行くのが辛い」

みんな、私と同じような気持ちを抱えていた。

結局、私は頼むことにした。 電話越しに状況を説明すると、 担当の人は優しく話を聞いてくれた。

「大丈夫ですよ。お任せください」 その言葉に、どれだけ救われたか。

今日の朝、会社に電話をかけてもらった。 私は家で、震えながら待っていた。

30分後、電話が鳴った。 「無事に退職の意思をお伝えしました」

それだけで、3年間の重りが 肩から降りたような気がした。

会社からの連絡は、それっきりだった。 引き継ぎの話も、挨拶も、何もなし。 私が思っていたほど、 私の存在は重要じゃなかったのかもしれない。

それがわかったとき、 少し寂しかったけれど、 同時にホッとしている自分もいた。

友達には「逃げたみたいで恥ずかしくない?」と言われた。 確かに、格好のいいやり方じゃないかもしれない。

でも、私は思う。 自分を守るために、 誰かの力を借りることは、 そんなに悪いことじゃない。

みんながみんな、強くはない。 直接「辞めます」と言える人ばかりじゃない。

今日、私は自分の人生を取り戻した。 格好悪くても、 迷惑をかけても、 それでも、前に進むことを選んだ。

この文章が、今まさに悩んでいる誰かに届いたら嬉しいです。 辞めたいけれど、言い出せない人へ。

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